レポート:新聞社に残され得る価値は何か?
クラスでは新しいメディアとしてのWeb のようなスタイルの情報発信システムがもつ
可能性について触れ、従来からあったメディア、たとえば新聞というシステムに
対するアドバンテージを幾つかあげました。
ではそうした情報発信のスタイルが普通になってきたとき、例えば新聞というメディアに
残される可能性としてはどのようなものがあるでしょうか?
講師から
新聞社に残されるものの本質はジャーナリストの集団である、ということだと考えています。
つまり情報の裏書きをとったり、全体的なコーディネーション、取捨選択をするという機能です。
ざっと簡単に「編集」の能力といってもいいかもしれません。
販売網でも営業網でもなく、今後の新聞はこの編集力にかかっているのかなと思うわけです。
受講生からの回答を見ると、非常によくまとまっていて、かつ内容がしっかりしてきました。
良い傾向だと思います。自分の思考をまっすぐ書ける事(書ける程度にはっきりさせること)は
重要な事です。
受講生からの回答
全文、原文のままですので、誤字や途中になっているものなど多くあります。
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個人が流す情報に比べて正確さ(流されている情報が真実であるという可能性)が勝っていると思います。また、様々な分野にわたる情報量の点でも新聞の方がしっかり管理できているように思います。
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電子出版のある中、新聞が出ず、新聞の残された価値はモノとして残ることだろう。やはり、人間、情報を見るだけでなく、手元に情報を持つという感覚が欲しいはずだ。それは人間の独占欲につながっていて、共有することもいいが、やはり、自分のモノが欲しいという考えにおいいるはずだ。だからこそ、形態は変わっていくことがあろうとも、情報も自分のものにするという新聞の価値、新聞、そして新聞社はありつづけるだろうと思う。
講師からのコメント:
音楽販売におけるダウンロード販売とパッケージ販売の違いと同じ視点ですね。はい、
書籍についてはパッケージ販売がまだまだ好調で、データ販売はうまくいっていません。
音楽についてはいままさに急激なユーザ側の変化のまっただなかにいます。
アップルはダウンロード販売をヒットさせましたが、まだまだ CD を買うという人は多い。
新聞・ニュース系がどちらにいくかは今後の推移をみないといけませんが、Newsweek などが一足先にオンライン版を
やっているにもかかわらず、それほど大きくならないところを見ると、これは書籍と同じくデータ販売がうまくいかない
分野なのかも知れません。その意味で受講生の意見は的を射ているかもしれませんね。(少なくともしばらくは)
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私が考えるには、Webのニュースより正確かつ詳しいニュースを届けることが新聞の存在価値だといえます。速報(スピード)ではテレビやWebには勝ち目がまったくといっていいほどないので、しんぶんはテレビやWebより時間をかけてさらに深く掘り下げたニュースをだしていけば今後新聞社はつぶれないでしょう。
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まとめて情報は見れることと必要が無くなったら、よいまどふきになる点。そこまで解像度が上がるとは思えないので、目線を動かすだけで一気に見れるということ。
講師からのコメント:
解像度については重要なポイントで、電子書籍がうまく売れない一つの理由だと思います。
閲覧性、とくにざっと見ることについてはまだ紙の方がスクリーンより優れていますから。
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Webページを見ていると、自分の見たい情報を診るには楽だけど、逆に自分のみようと思ったもの意外は目を通しにくくなる傾向があると思う。だから、新聞の記事等はある程度まとまっているので雑多に情報を見ることができるというのが現在のメリットだと思う。
講師からのコメント:
つまり新聞は、既にコーディネーションを受けたあとの情報を見ているということですね。
この情報の一次整理を誰がやるか、というのは今後重要な問題になるでしょう。
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新聞に残される価値は、減っていくことは間違いないと思います。しかしゼロになることは無いと思います。たとえば、ちょっと気になって調べたいもの(テレビ番組、天気予報、今日のニュースなど)がある時、新聞があるとすぐに調べることができ、便利である。、新聞社が発信される情報は、どんな方法で発信されたものでも信用性があると思う。
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前はテレビが出たときに、みんなは「新聞時代が終わるかも」と思っていましたが、何十年もたったのに新聞はまだ情報を人々に流すために使われています。情報が多くても。人によって情報を取るのが違うので、新聞はいつまでも価値があると思います。ほかの・・・
講師からのコメント:
将来を予測するのに過去の変化について考えるのは重要な事です。なるほど。そうですね。テレビは出たが新聞はなくなっていない。
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現在の日本では、国民一人一人が字を読む能力は持っているが、パソコンやケイタイTELなどは持っていない人がまだまだ多い。さらに、もって入るがそれを使いこなせる能力も持ち合わせている人は国民全体から見ると非常に少ないはずだ。これが、何十年後かには、字を読める能力と同様にパソコンなどを使いこなせる能力が国民全員に備わるとき、新聞の実質的な価値はなくなると思う。
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コンピュータよりも、新聞の方が手軽に、直接的に情報を読み取ることができる。新聞なら、地域ごとにその地域だけの情報(もっとも身近な情報)を知ることができる。必要な情報を取り出しやすい。
Yutaka Yasuda (yasuda@cc.kyoto-su.ac.jp)