レポート:よりデジタルなテレビ放送のかたち
地上デジタル放送は果たしてデジタルなものか?(データ処理であることを活かしているか?)
講師から
遠方の番組を見られるようにする、過去の番組を見られるようにする、といった案が書かれているものが幾つもありました。
悪くない案と思うのですが、なぜデジタル化することでこうしたことが可能になるのか、よりやりやすくなるのか、といったことが関連づけられて書かれていない(ヒトコトで良いですから)のが残念でした。単なる根拠のない思いつきと区別が付かないからです。
どうせなら「遠方の番組を見られるようにする」ことを「距離の制約を下げる」、「過去の番組を見られるようにする」ことを「時間の制約を下げる」ことと捉えて、それが何故可能になるのか、といった視点で考えてみても良かったのに、と思います。
(なにしろインターネットはビジネスにおける「距離」と「時間」の制約を引き下げた、とよく言われた経緯(過去)があるわけですから。放送における距離と時間の制約を引き下げる、といった話題が、無線ではなく有線でデジタル放送することとシンクロしないはずがありません。)
受講生からの回答
全文、原文のままですので、誤字や途中になっているものなど多くあります。
- 1つのチャネルで3番組も見れるのだから、
1番組は前日の番組などを放送したり、デジタルだからこそできる
データの簡素な受信を活かしたものにすればよいと思う。
ハードウェアとソフトウェア⇒放送以外のデータを送れば良い
- 有線化するなら、せっかく無線で電波を使って様々なことが出来ていたのに、
また工事にお金がかかるのではないかと思う。
フォーマットを変える(タテ:横の比率)。データだけを放送する。
講師からのコメント:
有線化についてコストがかかるのは当然ですが、しかし IP 電話の時に学んだように、汎用デジタルデータ転送網として有線の経路が既に存在しているのなら、デジタルテレビ専用の経路を用意するわけではなくなりますからコストの問題はそれほどシリアスでは無くなりますね。(余りこの回の講義とは関係ない話題ですが、、)
- いずれは電波という制約から離れるという視点から海外のローカル番組をも見えるようにする。
exカナダのトロントのオンタリオ放送とか。
デジタルデータを利用して、授業・講義する
(授業関係&レジュメ・テスト用紙のデータetc)
授業放送の中で、また別の映像(ビデオとか)も流す
- 前は何も浮びませんでした
話をきいて思い浮かんだのが、私はF-1が大好きなんですけど、
自分の好きな選手が後ろの方だと全く映らなかったりするので、全選手が流れて自分で見たいの選べたり、
ドライバーの視点からの映像をいつでも見れたりとかしたら最高だなぁとおもいました。
講師からのコメント:
後半についてはまさにその通りで、良いアイディアと思います。
たとえば野球中継をスタジアムに取り付けた 1000 のカメラからの 1000 ch の放送(実体はストリーミング)から、視聴者が好きなアングルを選択しながら見る、というような方法もあり得ます。どうせ多チャンネルというのならここまでやって欲しいもので、これは逆にデジタルならでは(デジタル技術を利用せずに実現するのはコストがかかりすぎる)の応用と思います。
- 見たい番組を一度に複数見る?
- デジタル放送をより有意義に活用するには、高画質高音質という点を活用して、映画の上映。
今までは映画好きの人は、見たい映画が上映されると高画質・高音質という
臨場感を求めるため映画館に行っていたが、それをしなくてすむ。
つまり家にいながら家が映画館。TVで映画をいち早く上映できる。
あと、1つのTVで家族みんなが同時に見たい番組を見る。
それでイヤホンでもしておけば、音が混ざり合うこともないしいいと思う。
- 意見というよりは希望ですが、電波を使った放送だと受信できるエリアが制限される
(例えば、関西では九州地方のローカルTV曲の番組は見れない)ので、
そういった制限を取り除く技術があればいいと思います。
(インターネットを使えばできるのでしょうか?)
講師からのコメント:
カナダの番組、と言うような例も上にひとつありましたが、もう少し視野を広げて、
「需要の多いものをリアルタイムで一斉送信する」ことが「放送」であると考えてみましょう。
これはまさに無線に向いた利用法なわけですが、どうせ無線から離れるのならこの無線本来の優位点とは異なる部分にメリットを見いだすべだ、というように考えてみてはどうでしょう。
たとえば「需要多いものは放送」に任せて(無線かどうかはともかく)、需要の少ないものは有線の Video On Demand で、つまり「リアルタイムではなく随時転送で」というように使い分ける、というのはどうですか?
放送内容(つまり番組)がデジタルデータとして記録されている限り、Video On Demand のシステムを作った翌日から放送用の番組データがそのまま Video On Demand システムで利用できるわけで、こうしたソフトウェアを活用した「使い回し(再利用、二次利用)」こそデジタルデータ処理の可能性の一つでしょう。
- デジタル情報は圧縮が可能なので、家庭のテレビ受信装置(チューナー・アンテナ・本体)
をもっとコンパクトにできると思う。
また電波にこだわらないのであれば、各過程に一本のケーブルを引くだけでインターネットもIT電話も
TVも受け取ることができるだろう。
そうすれば回線が込み合わないし、家の中で回線でゴチャゴチャになることもないでしょう。
スタイリッシュな生活スタイルを提案できるのではないだろうか?
- デジタルになったときのメリット⇒番組を永久的に保存できる。
・番組を録画しなくても、過去の番組をいつでも見れるようにする
(TVライブラリーのような感じ)
・再放送番組が必要なくなる
- 例えば、ブログのような個々人で送り得る情報の発信源として、
既存の放送メディアと異なるもっと小規模な町、村のコミュニケーションネットワークの形成ツールと
するのはどうか?⇒コンピュータ等の活用
- 地域専用の放送局
・地域の商店やセールやイベントを放送
・週に1回 住民(家庭ごと?)の会ギ \
・ねたきり老人や障害者の様子チェック / TV電話的?
番組放送を見ているときに、その横で気になったキーワードを操作一つで検索可能
- デジタルはデータの圧縮ができるので、TV局などは圧縮して大きなサーバーに保存しておき、
視聴者はそれを何かテレビ見たいなというときに検索して見る。
その際には電波ではなくてケーブルを利用する。
- ・テレビとインターネットと一緒にする。
番組のデータをネットからダウンロードし、それをケータイや家庭内LANでいつでもどこでも見れるようにする。
・電線網や光ファイバーや電話線を用いたインターネットが行われているので、それで番組を家まで送る。
あとは無線でいろんなところで好きなときに見れるようにする。
・番組をデータ化することで見忘れ、録画わすれを防止する。
- 国民の国政への参加を容易にする。
⇒国会をお茶の間に持ってくる(完全民主主義?)
講師からのコメント:
直接民主主義を現代でも実現できるのではないか?という夢はインターネットが広がり始めた頃に一つ語られた夢でした。
ちょっと今回のよりデジタルなテレビ放送、という話題からは離れてしまいましたね。
- テレビを受信するだけでなく、視聴者側からもデータを送信できる
・視聴者参加(データ受信でクイズ・アンケートに参加)
・インターネットみたいに
- 何時何分からスタートというふうに番組の開始時間を決めるのではなく、
ユーザーが見たいときに見ることができるようにする。
講師からのコメント:
他の意見にも幾らか共通して感じますが、どうしてそれがデジタル処理であることの優位性から来ているのか、という関連づけを示した記述が含まれていないのが残念です。
- 各人が、テレビ番組を作れないのか。
例えば、英会話番組など学習番組etc
- デジタルにするので、わざわざ電波を使わずに新たに回線を整備するという方向でもいいと思う。
例えば電話回線の横にもう一つくらいの回線は引けると思います。
空いた電波域は他の目的、例えるなら災害時の緊急被害者速報等を流せるようにするといった
使い方もあると思います。
講師からのコメント:
新たに回線を引かずに共用できることがデジタルデータの汎用性から来ていることを前回の講義では IP 電話を例に説明したつもりでしたが、、、
- 現在は通信に限った場合でも、デジタル回線のスピードを生かし切るには至っていない。
しかし、回線が太くなるにつれてサービスが充実しつつあるのも否定できる事ではなく、
放送のみに充分なはやさを確保し得るとは言い切れないであろう。
その分電波は、あらかじめ割り振っておくことによって、ある程度安定した送受信が可能である。
放送専用に回線を廃部すれば優先でも可能であるだろうが、
電波の有意性は否定できないであろう。
講師からのコメント:
この先の技術などについて余り断定的なことは誰にも言えないのでしょうが、現時点では帯域(通信可能量)については無線よりも有線の方が圧倒的に高く設定できるようになると考えられており、無線の優位性は移動体通信(どうしても線でくくりつけることができないもの)と、同報通信(一斉に多くの機器に同じデータを送信する)といったことについて考えられています。
- デジタル放送になったことで、編集の方法がパソコンなどと
連動しやすくなるという点が大きいのではないかろうか。
これによって、視聴者との相互作用も可能になった。最終的にはテレビとパソコンの融合に行き着くであろう。
- 放送と通信の融合
インターネットの回線を利用した放送をすると、経費が安いし、設備もすでにあるものを利用できる。
- 電波と普及の切り離し
- 放送が電波という形でなくなると、有線などになることで、
離れたところで地方の出身地のテレビ局が見れたり?
チャンネルの選択。
双方向?
- デジタル放送を老人や身体障害者の介護に利用する。一方的に情報を流すだけではなく、
双方向性を利用して決め細やかな対応が可能であると思う。
- 品質を落とすことでより多くのCHに分割できるのであれば、
より小規模な団体や個人で放送局をもてるのかもしれないし、
yahooが今ネットでやってるような、スポーツ中継を好きなアングルから選んで見れるような中継もできる。
講師からのコメント:
これは良い視点で、まさにそのようなことが可能にできたはずと講師も思います。
なぜ 3ch に分割する程度で決めてしまったのでしょうね。
もっとチャネル数を増やして、低画質ながら安価という味付けで放送局が再販する、といった格好のビジネスもできたでしょう。
例えばインターネットサービスプロバイダ(ISP)は大規模な回線を大規模な会社が買い、その通信能力(帯域)をさまざまに分割して、適した値付けをして二次 ISP 、三次 ISP に再販する、というビジネスモデルをとっています。
現在のテレビ局は通信業者(放送局)とコンテンツプロバイダ(番組製作会社)がかなり密な関係にありますが、インターネットの世界では通信業者とコンテンツプロバイダはもっと分かれています。いろんなやり方があっていいはずです。
- テレビの出演者を個人の好みに合わせて変えて放送することが出来るようにする。
世界中のTVを見ることが可能に。
講師からのコメント:
前者の部分は単なる願望を根拠無く書いたものでしょうか?
デジタルデータ処理と何か関係があるのでしょうか?
- 有線(例えば無線LANなど)で放送ができるようになるのならば、テレビでパソコンができるし、
逆に言えばパソコンでテレビが見れる。
つまりテレビとパソコ人の境目がなくなって今までのようにパソコン音痴である人などは
消えて、皆あたりまえにできるようになる。
- 電波を通じて送る信号がデジタル化されるので 常に1度限りの放送としてデータを流すのではなく、
データは放送局が蓄積しておいて、視聴者が番組を選んで好きなものだけ見る。
- 野球やサッカーなどのスポーツ番組のカメラアングルを視聴者が自由に選べるようにする。
- 放送は生中継のものは今までどおり続けるとして、映画やドラマといったものは一括して
手元にダウンロードして、好きなときに見ることができるようにするといったことも
できるのではないか。この場合、ツタヤなどのレンタル事業が必要になると思うが・・・。
実際にインターネット上では無料で番組を既に配信している(ex:USEN)
- デジタルデータをIP電話のようにインターネットを使って配信する。
インターネットはすでに普及しているため、データをうけとる媒体を現在のテレビからパソコンにかえる。
そうすれば既存の汎用設備を流用するだけなのでアナログからデジタルに移行する際にかかる
漠大な費用を削減できるのではないか。
またこのことにより、データの保存や複製も容易になるというメリットも生まれる。
- デジタルにするなら、情報を保存するのも容易になるはず。
主な番組は広告が目的なのでダウンロード形式にする意味はないが、
過去の放送を有料でダウンロードできるようにはできないか。
現在ではヒット番組、ドラマが一部ビデオ化される程度。
しかもビデオ化されるのは遅く、価格も高い。
デジタル放送をwindows mediaなどと同列に考えてよいかはわからないが、
情報がデジタルで圧縮可能なら過去の放送のダウンロードは比較的簡単になったはずだ
講師からのコメント:
興味深い指摘をありがとうございます。
なぜデジタル放送になると(デジタル化された番組(正確には番組データ)の流通がはじまると)、
なぜ「過去も番組が安く提供できるのか」「なぜ素早く提供できるようになるのか(またはそうはならないのか)」考えてみると良いと思います。
ちなみに講師の個人的感覚では、前者は技術的な理由が、後者はむしろ技術から離れて著作権などの理由が主要因として浮かんできます。
- デジタル放送に移行することでの利点はまだ実感できていない。双方向になっても
パソコンとつなぐことが出来てもそれほどの魅力は感じることが出来ない。
しかしそれは今提案されているプランに問題があるのではないだろうか。
与えられるばかりであったTVという機器にこちらからも発信することができる。
これによってできることはなんであろうか。
・今までは視聴率重視でうすっぺらい番組が作られることが多かった。
しかし本当にすばらしい番組に対してリアルタイムで感想を送ることが出来たら、
作り手にとってもハリができ、番組作りもかわっていくのではないだろうか。
・ネットを通じてリアルタイムオークションをする。
- テレビがデジタル化されれば、少し見逃したシーンや
よく聞き取れなかったセリフなどをビデオなどにとっていなくてもすぐに見返したりできるだろう。
パソコンのムービーなどのように画面の形などを自由に変えたりして見たり、
二つの画面で一つを逆再生やスローにしてみたりといったこともできる・・・
それになんに意味があるか はなはだ疑問だが、まぁおもしろいだろう。
一つの番組をいろいろな角度から撮影している以上、
画面分割でその全てのカメラからの映像を一度に見たりするというのもおもしろいだろう。
特に野球やサッカー、テレビドラマなどの際につかいやすいだろう。
スローリプレイとかを同時に見れれば、その分番組を長くできるかもしれない。
バラエティなどで使えるだろう。
- 電波制約から離れれば、現在の免許制も、よりゆるやかなものになるはず。
そうなれば、もはやテレビ放送も特権的に一部企業占有のものとはなり得ず、
多くの小規模多チャンネルテレビ放送となっていく。
専門チャンネル、地域チャンネルももっと多くなる。
既存の放送のようには広告収入(CM)も少なくなるはずだから
1つ1つの番組の質が下がってしまうのではないかと恐れます。
他の収入源が必要でしょう。
例えば、番組の中の1ワク(何分単位とか)で放送権を売却して、
放送したい番組を放送させるなど。
つまり放送局と番組制作会社がまったく別のものとなって、より競合性が高くなる?
(今述べていることはデジタル化とは直製関係ないような・・・)
講師からのコメント:
いえ、実はかなり関係があります。良いセンスではないかと思います。
デジタル処理というのは良く既存のシステムを分解するようなアクションを起こします。アンバンドリング、といった用語で調べてみると何か見えてくるかも知れません。
講義を聴いて、少し明確になりました。
放送と広告は区別されるべきでなく、番組内で広告されないと生き残れないでしょう。
企業放送がこれからはもっともっと増えていくのではないでしょうか?
- TVという箱の中でANALOGUEがDIGITAL化しようとしも、
箱自体がかわらない限り、可能性は伸び悩んでしまう。(所詮、TVはTV)
↓ならばいっそのこと↓
世の中からTV自体をなくして、大型のコンピュータを設置するようにすればいよい。
あるいは、コンピュータ自体が小さくともプロジェクター的な機能を備えることで、
大画面で映像が見れるようにする!!(もちろん、スクリーンや白壁が必要にはなるが重ばる事もないし!)
<MERIT>
コンピュータは勿論インターネットを使用できるのでオンラインのゲーム対戦(across
all over the world!)
や、リアルタイムで更新されていくNEWS、厄介な配線の不要性・・・など MERITは多々ある。
<まとめ>
ドラマや映画がTVでもコンピュータでも見れる、という現代ならば、
どちらかに統一するべきです。
そしてより汎用性・利便性に富んでるのがコンピュータならばそちらを選ぶべき。
- まずデータの規格を統一する
↓
ブロードバンドで(別に地上波でも良いが)配信する
↓
各家庭のテレビ・コンピュータで受信してデータ保管する
↓
保管したデータは加工・修正を可能にしておく。
(つまり個人がデータを加工できる)
↓
各家庭のデータはWInMXやWinnyみたいなP2Pソフトで、再配信が可能にしておく。
↓
そうすると、各家庭・コンピュータがそれぞれ1放送局になって
1:ある番組を見逃してもいつでも番組が見られるようになる
(他のユーザーからDL)
2:番組に個人が加工したハックパロディ番組を楽しめるようになる ※1
(ただし、元ネタ※2を悪意で変更してしまえる(=可能性が許される))
↑利点・質的変化
※1 日本から画像編集クリエイターが生まれる。WOW!
※2 ファーストサプライヤーはいかに集金するか
↓
ある一定期間たつとデータが消えてしまうプログラムを組み込んでおく。とか。
講師からのコメント:
昨今は誰かが作ったものを少しいじったものを提供することが多くなったようですが、本物のクリエイターというのは全くオリジナルで、いくらでもモノを作ります。
パロディは否定しませんし、パロディ作者を偽物とも思いませんが、一応意見として。日本から世界に飛び出しているオリジナルな映像クリエイター、アニメーション関係で多くいらっしゃいますね。
(オリジナルの作者を無視して違法にデータに手を加えて流通させる偽物クリエイター(何しろ他人の制作物を尊重しないのだから偽物に違いない)が多く存在する現状で、それに近い距離にあることをハックとか Winny といった用語を安易に使って説明していると感じます。デリケートな話題ですから、これでは回答者の認識を疑われますよ。)