2nd - SDN と OSS でもう一つ

10月末、SDN Japan のスピーチのなかで一つ面白かったのは OpenDayLight の Neela Jacques が「毎月コントローラ出るよ、もう30くらいもあるよ」「動くけど Interoperability が重要だよ」と言っていたことだ。つまりテストが出来ないよ、と。
これは Linux の立ち上がり時期に見た光景だ。昔 RedHat などディストリビューションがたくさん立ち上がった頃のアプリケーションの Certification 問題を多くの人が覚えていると思う。
Neela は(OpenDayLight の Executive Director という立場上も当然ながら)OSS (Open Source Software) のことについて触れていたし、タイトルだって "Open Source is Key to Accelerating SDN Adoption" とモロなのだが、しかし彼はこのスピーチで Linux が過去にどのようにこの問題と向き合い、何が起き、どう解決していったのか、といった話を出してこなかった。
それらが既知(well known)のものとして話が先のことに進むのならまだいいのだけれど、逆に「SDN Needs a Common Platform」と出てくる。これに違和感を感じたのは僕だけだろうか。あの頃、確かに多くの人が「共通のプラットフォームが必要だ」と大きな声で言っていた。しかしディストリビューションは 30 にはならなかったが、一つにもならなかった。幾つかのものに絞られた程度で、今でも新しいディストリビューションが出てくる可能性は幾らもある。(というかむしろそこが死んでしまっては困ると皆信じているだろう)
あの話、結局どうなったんだろう。 今となっては誰も Linux は単一のプラットフォームとしてもっと絞られるべきだ、と言わなさそうだ。Linux システムは結局 POSIX API で単一化されているのだと考えることもできるだろうが、実際にシステムを組もうと思った時に多くのプログラマが直面するのはもっと上層のライブラリ・インタフェイスで、それらは共通化されているようには僕には見えない。
(Linux から話が少し離れるけれど)アプリケーションにしても一時は Apache 一色になるかと思いきや、今はそうでも無いし、bind に至っては一色になる事にむしろ懸念が広まっていた。
僕は Jurrassic Park の台詞 "Life finds a way" を思い出してしまう。 結局 OSS 世界ではエコシステム(生態系)という言葉通りに、多様性と相互の結びつきが全てを包み込んでしまったように僕には見えている。
つまり OpenFlow Controller、それに限らず SDN 技術全体も、やはりそれに取り付く多くのユーザ、エンジニアの努力の積み重ねによって、そういうごっちゃ混ぜの、決して単一化されないユラユラした世界へ進んでいくのでは無いか、と思っている。そしてそれが良い、と思っている。
なお、Neela は「Common Platform」が必要だ、と言う割には「どのようにしてそこに収束させていくか」といったことも話さなかった。
P.S.
このごろ思うのだけれど、ネットワーク界隈の人はこのこと(Linux や OSS がどのようにしてここまで来たか)をそれほど把握してないんじゃないかな。オープンなコミュニティ活動が年々高まっている IT 業界でも何というか分野断裂的なことが僕の想像以上に強いのか。

References